社会福祉法人 鶴心会のホームページ

　令和元年、９月８日深夜から９月９日朝方にかけて台風15号が千葉県に上陸しました。千葉市中央区で最大瞬間風速57．５メートルを記録し、木更津では49メートル、館山では48．８メートルと大きな被害になる暴風が直撃しました。
　千葉県では大規模な停電が発生しライフラインがストップ、倒木や停電の影響で交通網も麻痺する状況になりました。
　まず、台風による大雨で施設内に雨水が入り、４階、３階、２階とフロアーを濡らしていきました。夜勤職員は第一にご利用者を安全な場所へと避難させ、雨水の処理をしました。その後、停電が発生しました。
　９月９日朝から復旧するまでの間、職員は対応に追われました。各部署でそれぞれの優先順位を考えての対応です。
まず一番は「食事」です。停電初日の朝食は非常食での対応になりました。冷蔵庫が使用できないため、食材の確保や保存に苦慮しつつも、工夫を凝らし温かい食事を提供できるように努めました。ただこれだけでは終わりません。この食事を各フロアーへと持っていかなくてはいけません。エレベーターも使用できませんので職員の人力で、これらを運びました。
　そして、「水」です。トイレを使用するにも掃除をするにも水は必要です。トータスでは井戸水を使用しており、通常は揚水ポンプで汲み上げ給水ポンプで施設内に送っていますがそのポンプは電気の力で動いているため出ません。１階にある水道だけが使えたので何人もの職員で　20リットルのタンクに水を入れ全フロアーに階段で運びました。水は生活用水だけでなく、ペットボトルやタンクに汲んだ飲料水も運んでいました。この水運びは想像以上に大変な作業で、エレベーターが止まった施設内を４階まで大汗流しながらの運搬作業だったことを思い出します。またお湯を沸かすためのボイラーも電気で動いているため給湯が出来ずお風呂も使用できない状況でした。幸いにもガスは使用できましたので、お湯を沸かし清拭を行いお風呂の代わりとさせていただきました。こんなに電気に頼っていたんだと電気の有難さを感じています。
　そしてここトータスはご高齢のご利用者が過ごされている場所です。この暑さで心配をしないといけないのが「体調」です。
９月９日～９月11日にかけ、30℃を超す暑さが続き、「熱中症」の心配がニュースでも挙げられていました。施設内でもかなりの暑さでしたので複数台の発電機で扇風機を使用したり、窓を開けながら少しでも風通しの良い所、日影などで暑さをしのげる工夫をしました。
　この環境が認知症の方々には変化が多く、不穏症状につながる心配もありましたが、職員それぞれが工夫し、皆様穏やかに過ごすことができました。
　ですが、この暑さ、高齢者にとってはかなりの体力を奪われます。数名の方の発熱症状が現れ始めました。冷凍庫の中にわずかに冷えていた保冷剤を使ったり、濡らしたタオルで冷やしたり、水分補給を多めに促したり。中には早くに電力復旧したという職員がわざわざ自宅から保冷剤を持参し、氷を調達したりしてくれたおかげで、酷く体調を崩される方はいませんでした。
　夜間はランタンを使用し、職員はヘッドライトで介護にあたりました。ナースコールも作動しない為、見回り回数を増やし細心の注意を払いながら夜勤業務にあたりました。
もう一つの問題、それは連絡手段でした。トータスは電話が繋がらない状況でしたので大変ご心配をかけたと思います。こういった時の連絡手段の方法、出来ない時のあり得る想定など、今後の課題となりました。
　トータスの電力復旧は９月12日の夜でした。鶴舞周辺でまだ復旧されていないところから見れば早い復旧でした。復旧に尽力して下さった機関の方々には本当に感謝です。
　今回、この停電を経験して、今の時代だからこそ災害に起こるであろう、ライフライン停止時の対応を日頃から考えていかなくてはいけないことを改めて感じました。
　また、人と人との繋がりの大切さ、互いを思いやる心、協力してこそ成しえることが経験、そして学んだと思います。
９月13日、すべての設備が復旧しました。ご家族にはご心配をおかけしましたことをお詫び致します。また、地域や関係者の皆様、加茂診療所の田中先生、及び、ご家族…皆様からのたくさんの温かいお言葉、救援物資をいただきましたことを心よりお礼申し上げます
　そして、日々頑張っていた全職員の皆様。最高だよ！！

看護師　武田　留美