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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

「上野塾」を学んで

2020-11-01
新聞
 毎年、敬老の日に合わせて統計局から発表される日本の高齢者人口。2020年9月現在、全人口の28・8%が65歳以上の高齢者という割合です。2019年の発表では28・4%だったので、1年で0.4%増えたことになります。厚生労働省からは100歳以上の高齢者の人口も発表されています。2019年より9176人増加の80450人。トータスデイサービスにも100歳過ぎて元気に通っていらっしゃる方がいます。
 加齢と共に気になってくること、それが認知症です。認知症の最大の原因が加齢であり、認知症は誰にでも起こりうる身近な病気と言えます。現在は日常的に「認知症」という言葉を使っていますが、認知症は病名ではなく症候群です。例えばのどが痛い、熱が出た、鼻水が出るなどの症状があると「風邪かな?」と思う人が多いですが、これも風邪症候群です。インフルエンザや今ならコロナウイルスでも似たような症状が出るでしょう。認知症も「記憶障害のほかに、失語、失行、失認、実行機能障害が一つ以上加わり、その結果、社会生活に明らかに支障をきたし、以前の能力レベルの明らかな低下がみられる状態」と定義されています。
 認知症は、その原因となる疾患によりいくつかに分類されます。認知症の原因となる病気の半分以上を占めるアルツハイマー型認知症。他にも脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。
 介護スタッフ、家族にとって認知症の方のケアに難しさを感じることは多いと思います。認知症支援はケアが中心となる一方、認知症の状態は医学的な疾患が原因であり認知症ケアをより進めるためには、医学的理解も必要とされます。なぜ認知症の状態になっているのか。その原因を分析するプロセスを見える化し、形式知化したものが上野秀樹先生(千葉大学医学部附属病院地域医療連携部 特任准教授)の「認知症の見立て塾」です。上野先生は認知症ケアにおいて「医学的に改善可能な側面」を検討することの重要性を強調しています。身近にいる人がまずは気づき、適切な情報を医療者へ提供することで、改善可能な側面に対応することが出来る。また、認知症の人の行動を理解するためには、本人、家族を含め医療、介護等多職種の協力が必要です。その能力を「見立て」という技術に形式化することで認知症を理解しやすくしています。
 今年8月から隣接する介護老人保健施設クレインの主催で上野先生の「認知症見立て塾」がオンラインで行われています。上野先生が行っている認知症の見立ての手順をオープンにして、事例検討をもとに追体験し、誰でも見立ての考え方や知識を身に着けられるようにする研修です。認知機能障害の重症度が認知症の重症度ではないこと、治療可能な認知症は適切なタイミングで治療を行うことが大切であること、改善可能な部分の評価と対応を行い続けることが重要であることとして、改善可能な部分の評価の仕方を学ばせていただいています。
 認知症における見立てでは、第1段階で、状態の評価。第2段階で、改善可能な部分の検討。第3段階で疾病診断を行います。第一段階の状態の評価では、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下など認知機能障害の側面を評価し、更に生活障害、精神症状の側面も評価します。
 第2段階では、改善可能な部分の検討を行います。認知症とは「脳の機能低下から、認知機能障害が起こり、この結果として生活障害が起きた状態」で、この脳の機能低下を引き起こす原因が様々あって、中には治るものもある為、きちんと検討することが大切とされています。加齢に伴う脳神経細胞の障害によって、徐々に進行していく認知症。認知機能の低下には波があり、疾患、夜間せん妄、薬の副作用など誘発因子は様々です。そしてそれらの中には「改善可能な」認知症が紛れている可能性があります。治療可能な認知症では脳の機能低下が一時的で、まだ神経別細胞が死んでいない状態。その要因を取り除けば改善の見込みがあります。
第3段階は認知症疾患の検討を行います。認知症は、その原因となる疾患によりいくつかに分類されます。認知症の原因となる病気の半分以上を占めるアルツハイマー型認知症。他にも脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。発症の原因や症状にはそれぞれに違いがあり、薬も違います。うつ病、せん妄等、認知症と似た症状の疾患もあります。
 平成29年度高齢者白書によれば、2012年は認知症患者数460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが2025年には5人に1人、20%が認知症になるという推計もあります。認知症は誰にでも起こりうる状態になりつつあり、基本的な知識を多くの国民が身に着けることにより、地域の医療・福祉にとって有益になるものと考えます。その一つの方法が「認知症見立て塾」だと思います。まだ学習半ばですが、今後の業務に活用できるようしっかりと習得し、認知症の人が穏やかに生活できるようお手伝いが出来ればと思っています。
トータス居宅介護支援事業所 岩坂 律子
医療法人社団得心会
〒290-0511
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・介護老人保健施設クレイン
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