社会福祉法人 鶴心会のホームページ

　地域包括支援センターでは多岐にわたる支援を行っています。特に介護保険に関する相談が多いですが、最近は重層的支援体制整備事業が始まったことにより、65歳以下の障がいを持った方の相談も増えてきました。
　そんな中、以前から動物の相談も寄せられていました。特に猫の相談は、繁殖期を迎える春先や秋ごろに相談が増えるように感じます。今まで包括が関わった数多くの事例の中で、昨年度関わった事例（トータス新聞にて紹介した事例を含みます）を紹介させていただきます。
　４月に関わった事例です。飼い主は独居高齢者で、家の中は荒れていました。そんなお宅に猫が数匹と犬が１匹、他もニワトリやメダカもいました。だんだん自分自身の生活もままならなくなってしまった時に、玄関先で生後２～３日ほどの、まだ目も開いていない仔猫が３匹いたそうです。飼い主が見つかるまで保護することになり、職員が交代で自宅へ連れ帰ってお世話をし、引き取り先を探した結果、３匹とも素敵な飼い主の方にもらわれていき、幸せな生活を送っているそうです。
　７月に関わった事例です。飼い主は、俗に「ゴミ屋敷」と言われる家に住んでいる方で、動物が大好きで猫を７匹ほど飼っていました。しかし自宅には住める状態ではないため引っ越すことになり、猫たちを保護することになりました。この猫たちは成猫だったため、抱っこでは捕まえることは難しく、市原市内の保護団体から捕獲機を借りて７匹捕まえることができました。内１匹は雄猫で、６匹の雌猫のうち５匹は妊娠していました。捕まえてすぐに病院に連れて行ったため、そのまま堕胎することになってしまいました。この７匹は成猫なため、貰い手がなかなか見つからず、今も保護施設で過ごしているそうです。
　９月の事例です。実はこの事例は、４月に保護した猫と一緒の独居高齢者の自宅の玄関から保護されました。４月の時よりも少し大人な茶トラ猫が２匹、三毛猫が２匹でした。すぐに保護し、病院で診てもらうと特に大きな病気はなく元気とのことで一安心し貰い手を探すこととなりました。結果、今回も４匹とも貰い手が見つかり、幸せな生活を送っています。
　猫を保護すると、避妊や去勢をしていない猫がほとんどです。猫の繁殖能力は高く、１匹の雌猫から５～６匹ほどの仔猫が生まれます。その仔猫が雄雌いれば、そこからまた５～６匹の仔猫が生まれと、どんどん増えていってしまい、あっという間に猫屋敷になってしまいます。そのため、次の飼い主を見つけるときに、避妊や去勢をしていないと貰い手が見つからないこともありますが、包括で関わっている方はお金に困っている方が多いので、手術費用を出すことが難しいのが現状です。そんな時に、千葉県内にある“やまがた不妊去勢クリニック”の存在を知りました。そこは、『福祉現場に動物医療を』を合言葉に２０２２年に開設されました。このクリニックは野良猫を中心に不妊去勢手術を専門に行っており、しかも低価格で手術を行っています。訪問系の介護サービス事業者からたまに話がでますが、動物が原因で福祉サービスの提供が難しいことがあります。動物の放置は、利用者だけでなく、訪問スタッフ含め、身体及び精神上の健康福祉の著しい低下につながります。しかし、私たちは業務上、飼い主がいる動物には手を差し伸べることができず、解決方法や相談先が思い浮かばないのが現状です。現に、上記にご紹介した事例も包括で何とかせざるを得ませんでした。動物問題の相談先として機能する組織はなく、このクリニックがその役割を担うことで、福祉現場における動物問題解決の受け皿の一つとしても思えますし、また、そのクリニックが問題解決の仕組み構築を目標に活動しているそうです。このクリニックが動物問題の組織として立ち上がり、上手く機能すると福祉現場で何かあった場合、すぐに相談ができ、私達にとっても大変助かる組織となります。
　私たちとしても、獣医師の方と連携が取れるようになることはとても心強く思います。地域の方全員と連携を図りながら、これからも仕事をしていきたいと思います。

地域包括支援センタートータス
　　　　　　　　　佐藤　佳那