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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

介護事故とは ~家族として思うこと~

2024-11-01
新聞
 近年、介護施設や介護サービスでの事故や虐待の報道が多くなっていますが、このような介護事故のリスクはどの施設にもあると思います。介護事故とは、介護サービス提供中に起こる「予期せぬ事故全般」の事を指す言葉です。厚生労働省が出している資料の中では「事故」↓施設における福祉サービスの全過程において発生する全ての人身事故で身体的被害及び精神的被害が生じたもの。なお、事業者の過誤、過失の有無を問わない。(引用「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み~利用者の笑顔と満足を求めて~」について)とされています。利用者に対して実害あるいはその恐れがある場合は、介護事故とみなされます。具体的には、利用者の転倒や所有物の破損・紛失、誤嚥、誤薬などです。
 私の母は県外に一人で住んでいました。8年前に介護認定を受けデイサービスと訪問介護を利用し、近所の友人のお世話になりながら生活していました。6年前に腰椎の手術を受けたのですが、固定したボルト部分に膿がたまり、歩行が出来なくなりました。入院中と退院後に移ったクレインでのリハビリのお陰で、移動は車いすですがトイレで排泄が出来るまでになり、某施設へ入所しました。        
 5年間は特に何事もなく過ごしていたのですが、今年の初め頃に「飲み込みが悪いのでおかゆ、飲み物にはとろみをつけて対応しています」と施設から連絡がありました。3月に「肺炎」と言われ入院。その数日前に面会に行ったときには特に体調が悪い様子ではなかったので「誤嚥性肺炎かな」と思いましたが、順調に回復していたので施設には何も言いませんでした。
 退院後に施設へ戻って1か月程した頃、施設相談員から「移動中に車いすから落ちて頭を打ったので救急搬送します」と連絡がありました。病院に駆けつけると母の意識はありましたが、呼びかけても頷くだけ。医師から「頭蓋骨骨折、外傷性硬膜下血腫です。止血剤を入れますが、出血が止まらなければ手術になります」と説明されました。入院の手続きをしている間に、付き添ってきた看護師と施設相談員に事故の状況を聞きましたが「駆け付けた時は地面に落ちていたので、詳しい状況はわからない。施設に戻って対応していた介護職員から聞きます」と。車いすから落ちた程度でこれほどの外傷を負うとは考えにくかったので、母が勝手に立ち上がったのではないかと聞いたのですが「そうではないと思います」との事でした。幸い母の出血は止まり、1か月ほどで退院できるまで回復。母は事故当時の事を覚えていて「あそこには戻りたくない」と言ったので、在宅介護も考えました。しかし仕事をしながら母を介護するのは難しいと思い、クレインに相談、入所させて頂きました。入院中食事量が極端に少なく、高カロリーゼリーをやっと飲むような状況だったのですが、クレインの言語聴覚士の阿部先生と職員の方の暖かい対応のお陰でおかゆが食べられるようになり、おやつは原型のまま食べられるまでになりました。身体機能もリハビリの先生にしがみついて立つまでになりました。本当に感謝しかありません。
 母の入院後に事故状況の説明と現場確認のため入所施設を訪問しました。そこで聞いた説明が「気分転換にと思い外へ散歩に行った。出る時は正面玄関から出たが戻りは、裏にある職員用の出入り口から入った。開錠のボタンを押すために車いすから手を離したら、車いすが後ろへ下がり、後ろへ倒れた」との事でした。事故現場は1mほどの高さで4段の階段に簡易のスロープを置いてあり、上り口は1m四方あります。正面の壁に開錠ボタンがあり、扉は手前に引くものでした。上り口に置いた車いすがなぜ、後ろに動くのかがわからなかったので訊くと「介護職員は車いすの前に立ってボタンを押したので、とっさに対応できなかった」「車いすのブレーキは片方だけかけた」と言っていました。納得のいく説明ではありませんでした。
 もともと介護サービスを利用されるのは、身体的な不自由があったり、認知機能の低下で自分の行動のコントロールが難しい高齢者の方です。職員のほうも、1対1で常に見守りが出来るわけではありませんし、常時目を離さないことは不可能なので、どれだけ気を付けていたとしても事故が起こる可能性はゼロではないと思います。しかし、今回の母の事故に関しては施設内の安全管理体制が出来ていなかったと思います。クレイン、トータスでは、リスク委員会が設置されていて各部署から出される事故報告書に関して内容の検証と対応策、その後の経過が検討されています。家族への対応も適切に行われています。
 今回この文章を書くにあたり、介護事故についての統計を検索したのですが、全国レベルの統計は見つけることができませんでした。自治体への事故報告書提出は法令上の義務とされていますが、自治体から国への報告は求められておらず、全国でどんな事故がどのくらいの頻度で発生しているかは把握できていない状況となっています。しかし、民間による調査は行われており、そのデータによると事故件数が2,000件を超えている自治体がある一方で、極端に少ない自治体もあることが報告されています。(参考:千葉県老人福祉施設での事故発生の概況:事故の発生時の状況(平成27年度)をもとに㈱平和テクノシステム作成)によれば、事故件数1,051件で特養やショートステイ他の施設において割合が大きいのが「転倒」となっています。1,051件中635件と約6割を占めています。さらに「転落」を合わせると、施設で起こりうる事故のなんと7割という結果が出ています。「転倒」「転落」は高齢者の容態を悪化させ、要介護度を引き上げる原因になったり、場合によっては死に至るという統計があります。介護施設に入居している方の家族は、施設に対して感謝の気持ちはもちろんですが、様々な不安や感情を持っています。入所時に事故のリスク説明は受けていますが「自分の親は大丈夫だろう」と思っている家族も少なくないと思います。トラブルが発生した際には適切な対応をとり、家族が信頼と感謝の気持ちを持ち続けられるようにして頂きたいと思います。

トータス居宅介護支援事業所
岩坂 律子

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